年金ってどうせもらえないから払わなくてもいい?払わないとどうなる?
「年金は払ってもどうせもらえないから損するよ」とか「年金制度は破綻する」なんていう言葉をよく聞きますよね?
やっぱり、年金は将来もらえなくなるものなのでしょうか?払わないほうがいいの?
国民年金保険料を払わなかったらどうなるの?
そんな疑問にお答えしましょう。
目次
国民年金保険料を払うのは国民の義務です
そもそも国民年金保険料は、払うとか、払わないとか、各自が選べるものではありません。必ず払わなくてはいけないものです。国民の義務なのです。
少し前までは国民年金保険料を払わないからといって、それほど厳しく取りしまるようなことはありませんでした。
けれども最近は国民年金保険料を払わないと、強制徴収が行われ、連帯納付義務者として、世帯主や配偶者の財産が差し押さえられることもあります。
また、委託された民間事業者が、電話をかけてきたり、突然訪問してきたりして未納者に納付をするようにと言ってくることもあります。
企業などに勤めている人は、お給料から強制的に厚生年金保険料が引かれています。国民年金保険料は厚生年金保険料の中に含まれていますから、個人で国民年金保険料を払う必要はありません。
日本年金機構のデータによると、平成30年度の国民年金保険料と厚生年金保険料を合わせた保険料支払い者は98%の6,746万人となっています。(免除や猶予を含む)
免除や猶予の申請をせずに国民年金保険料を払っていない人はたったの2%しかいません。
国民のほとんどの人がきちんと国民年金保険料を払っていることがわかります。
年金は社会全体で高齢者を支える賦課方式
私が就職したばかりの頃は「年金を払っても60歳になる頃にはもらえなくなる」と言われていました。「もらえなくなるのに、払わなきゃいけないの?」とモヤモヤした気分でしたが、私の親は「自分がもらうのではなく、今、あなたのおばあちゃんの年金を払ってあげていると思って払いなさい」と言っていました。
そうです。まさしくそれです。年金のシステムは、若い人が払って、その時の高齢者がもらうものなのです。若い人が年金の財源を支えて、高齢者に年金を支給する、というサイクルを続けていけば、ずっと永遠に回り続けていける夢のような制度です。
年金制度は保険会社の保険のように、自分が払ったお金をためておいて将来自分がもらう「積立方式」ではなく、若い時に払ったお金はその時の高齢者の年金として使い、自分が高齢者になって年金をもらう時は、その時現役の若い人が払ってくれる「賦課方式」なのです。
若い人が保険料を払うのを突然やめてしまうと、財源が足りなくなって高齢者が年金をもらうことができなくなってしまいます。
この年金のサイクルを止めずに回し続けていくためには、若い人が年金保険料をきちんと払い続けていくことが大切なのです。
賦課方式のメリット
賦課方式のメリットは、若い人が払ったお金を、その時の高齢者がもらうので、インフレによる影響がないことです。受給する時のお金の価値に見合った年金を受給することができます。
年金保険料は20歳から払い始めて60歳までの40年間払い続け、65歳から受給します。45年という長い年月の間にはお金の価値が大きく変わる可能性があります。
もし年金が、自分が積み立ててきたものを自分がもらう「積立方式」だとすると、インフレが進んでお金の価値が1/10になってしまった場合、受給できる年金は1/10の価値しかなくなってしまいます。
現在の国民年金の満額受給金額は月額約65,000円ですから、その1/10ということは6,500円です。若い時に大変な思いで支払い続けてきたのに、毎月たったの6,500円しかもらえないことになります。それは困りますよね。
賦課方式のデメリット
賦課方式のデメリットは、若い人の人数が少ないと成り立たないことです。
年金の制度ができた昭和36年は日本が高度経済成長のまっただ中にあり、ベビーブームで子どもの数が増え続けている時でした。一人の高齢者を何人もの若者が支えていくことができました。
ところがこの60年弱で状況は大きく変わりました。出生率は減り続け、医療が発達して平均寿命が伸びました。そのおかげで少子高齢化が進み、高齢者を支える若者が減ってしまったのです。
これからは大勢の老人を若者が支えていかなくてはなりません。
年金制度は破綻しない!?
このままではそのうちに年金制度は破綻するのではないかという声も聞かれますが、
「国の制度ですから、国が存続する限り破綻することはありません」と国は言っています。
国としても、なんとか破綻させないようにと、あの手この手で対策をしています。
年金の財源を支える若い世代の人数が減っていくことへの対策として、なるべく多くの人から財源を確保できるようにと、パートやアルバイトの方も厚生年金に加入できるように法改正が行われました。
厚生年金の加入者が増えると、事業者が年金保険料の1/2を負担するので、結果として、国は税金を使わずに年金の財源を増やすことができます。
現在、基礎年金の1/2は国の税金から支払われているのですが、この割合も平成21年に増やされました。
年金の財源を増やすためには、収入を増やして支出を減らさなければならないわけで、それは言いかえると、年金保険料はなるべく多くの人にたくさん払ってもらって、年金の支払いは、できるだけ短い期間、少ない金額にするということになります。
社会が変化しても公的年金制度が維持できるよう、年金額の価値を自動調整する「マクロスライド」という仕組みを平成16年から取り入れました。厚生労働省は、この「マクロスライド」によっておよそ25年後には年金受給額を約2割減らす見通しを発表しています。
少子高齢化がずっと続いていく場合、年金保険料は値上がりし、受給できる年金額は減っていくであろうと思われます。年金を受け取れる開始年齢もだんだんに引き上げられていくと予想されます。
このように、国は様々な対策をして、入ってくるお金と出ていくお金のバランスをとっているから、年金制度が破綻することはないと言っているのです。
ただし年金の受給額が減ることは大いにあり得るということは覚えておかなくてはなりません。
「公的年金は無くならないけれど、もらえる年金額は確実に減っていく」はこちらをご覧ください。↓
国民年金保険料を払わないデメリット
年金制度は65歳以降に年金をもらえるというだけの制度ではありません。
障害を負って働けなくなった時などに障害年金を受給できたり、子育て中に配偶者に先立たれてしまった場合などに遺族年金が受給できたりといった、もしもの場合の保障もあるのです。
日本年金機構のデータによると平成29年度末時点で
障害年金をもらっている人は 214万人
遺族年金をもらっている人は 652万人
こんなに大勢の方が受給の対象となっています。
もし、国民年金保険料をきちんと払わない場合、65歳から年金をもらえないのはもちろん、障害年金や遺族年金を受給することができなくなり、これは、大きなデメリットとなります。
払えない時はどうすれば良い?
そうは言っても、どうしても国民年金保険料を払うお金がない場合にはどうしたらよいのでしょうか?
払わないまま放っておくと「未納」という扱いになり、65歳からの老齢年金や障害年金、遺族年金が減額されたり、もらうことができなくなります。
年金事務所できちんと手続きをして、「免除」や「猶予(延期)」扱いにしてもらうことが大切です。
「免除」や「猶予(延期)」には下記のようなものがあります。
- 全額免除制度 (失業、退職、また収入が減少して保険料の支払いが困難な方)
- 1部免除制度(3/4免除、半額免除、1/4免除)
- D Vを受けて別居している方の特例免除
- 産前産後期間保険料免除制度
※全額免除や一部免除になった場合、保険料を全額納付したときに比べて、将来受けとる年金額が少なくなります。
※産前産後期間保険料免除制度の場合は、保険料を全額納めた期間としてみなされ、将来の年金受給額 は少なくなりません。
- 学生納付特例制度(猶予)
- 納付猶予制度
※猶予の場合は猶予の期間分、将来の年金額は減額されます。
保険料の免除や猶予を受けた場合、将来受け取れる年金額が少なくなりますが、10年以内であれば保険料の追納をして将来受けとる年金額を増やすことができます。
まとめ
国民年金保険料を払うのは、国民の義務です。
国民年金保険料を払わないと、強制徴収が行われ、連帯納付義務者として、世帯主や配偶者の財産が差し押さえられることもあります。
少子高齢化が進み、高齢者を支える若者が減ってしまったので、年金制度は破綻するのではないかという声も聞かれますが、「国の制度ですから、国が存続する限り破綻することはありません」と国は言っています。
国民年金保険料をきちんと払わない場合、65歳から年金をもらえないのはもちろん、障害年金や遺族年金を受給することができなくなりますので、払えない時は年金事務所できちんと手続きをして、「免除」や「猶予(延期)」扱いにしてもらうことが大切です。
「学生が国民年金保険料を払えない時どうしたらいい?免除してもらえる?」はこちらをご覧ください。↓
「子どもが払えない国民年金保険料を親は払い続けるべきか」はこちらをご覧ください。↓