子どもが払えない国民年金保険料を親は払い続けるべきか
最終更新日:2022年4月14日
子どもが学生で国民年金保険料を払うことができない時、「学生納付特例」を利用して納付を延期(猶予)してもらわずに、親が代わりに国民年金保険料を払う方法があります。
親が代わりに国民年金保険料を払う場合のメリットと、
卒業後も子どもに収入がなくて国民年金保険料を払えない場合、いつまでも親が代わりに払い続けるべきなのかどうかについて考えてみましょう。
目次
「国民年金保険料」を納めるのは国民の義務
日本では20歳になったら全員「国民年金保険料」16,590円(2022年4月現在の月額)を支払わなければいけない義務があります。
でも20歳というと、ほとんどの人がまだ大学生や専門学校生などの学生で、「国民年金保険料」16,590円を毎月支払うのは難しいというのが正直なところです。
20歳になった学生が国民年金保険料を払わないと、将来、年金をもらえないだけでなく「障害基礎年金」や「遺族基礎年金」がもらえないというデメリットがあります。
「学生が国民年金保険料を払えない時どうしたらいい?免除してもらえる?」はこちらをご覧ください。↓
あえて「学生納付特例」を使わない
「学生納付特例」の申請をすることで、国民年金保険料を納めることができなくても在学中の保険料の納付を延期(猶予)してもらうことができます。いざという時は「障害基礎年金」や「遺族基礎年金」をもらうこともできます。
「学生納付特例」の期間も国民年金保険料を納めた「期間」としてカウントしてもらえるので、受給資格期間に関してもデメリットにならないようにしてもらえます。
けれども、この「学生納付特例制度」を利用した場合、実際には国民年金保険料を納めていないので、将来受け取れる年金額は少なくなってしまいます。
払わなかった期間の国民年金保険料を10年以内に払うこと(追納)ができれば、将来受け取れる年金額を増やすことができますが、
就職したばかりで収入が少ない時に「厚生年金保険料」を支払いながら、そのうえ学生時代の未納の「国民年金保険料」を払っていくのはかなり負担が大きいのではないでしょうか。
特に奨学金の返済がある場合は、未納の「国民年金保険料」を払うのは、そうとう厳しいでしょう。
どうせいつかは払わなくてはいけないものだから、子どもの負担を減らすため、あえて「学生納付特例制度」を利用しないで、子どもの代わりに親が国民年金保険料を払ってあげるという選択肢もあります。
自分の将来に関わる国民年金保険料は自分で払うべき?
子どもが学校を卒業して就職すれば、国民年金は厚生年金に切り替わり、お給料から厚生年金保険料が引かれるようになります。
けれども就職をしないで大学院に残るとか、フリーターになる等の場合には、国民年金保険料を払い続けていかなければなりません。この場合、親は国民年金保険料を払い続けるべきかどうか悩むことになります。
20歳を過ぎて成人になり社会人になったのだから、自分の将来に関わる国民年金保険料は自分で払うべきだという考えもあります。
そうは言っても、収入がなくて国民年金保険料を払うことができない子どもを見捨てていいのか悩みます。また、国民としての義務を果たしていない子どもの親としての責任を感じる場合もあります。
子どもに発達障害などがあったり、身体が弱かったりして社会に出て働くことが困難な場合もあります。
障害者として認定されれば、国民年金保険料を納めることを免除されますが、障害者と認定されるほどではないけれど、普通の社会生活を送ることができない子どもの場合、働くことができなくても何の保障もないのです。そういった子どもたちの将来を親が心配するのはごく当然のことでしょう。
親が国民年金保険料を払い続ければ、将来子どもが年金を受け取ることができ、とりあえず必要最低限の収入を確保することができるのです。
ケースバイケースで親が子どもの国民年金保険料を払っても良いのではないでしょうか。
法律(国民年金法代88条)では
「世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う」
と定められていて、子どもの保険料を世帯主(親)が払うことを義務としています。
最近は、保険料を未納のまま放っておくと、子ども自身や連帯納付義務者である世帯主の財産が差し押さえられることがあるそうです。
どうしても払えない時は、年金事務所に相談して「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の手続きをしましょう。
親が子どもの国民年金保険料を払う場合のメリット
生計を一にする(子どもの生活費や学費などを払っている)親が子どもの国民年金保険料を支払うと、年末調整や確定申告で親の所得から社会保険料控除として100%差し引くことができ、節税になります。
一般的に子どもの方が親より年収が少ないので、親よりも税率が低くなっています。社会保険料控除で引かれる金額を計算する時に、その税率を使うため、親の高い税率で計算した方が戻ってくる税金の額が高くなってお得なのです。
子どもの年収制限はないため、子どもに所得があっても親が国民年金保険料を払うことが可能です。
年末調整や確定申告の仕方はとても簡単です。
社会保険料控除という欄に、子どものために払った国民年金保険料の金額をプラスして、支払った証明になるもの(日本年金機構から送られてくる社会保険料[国民年金保険料]控除証明書)を添付すればOKです。
一般的なサラリーマンの方であれば2万円弱〜4万円ぐらい所得税が安くなります。また、翌年の住民税も安くなります。
今まで親が払っていたのに、申告していなかったという場合は、5年分さかのぼって還付申告をして、払いすぎた税金を返してもらうこと(還付)もできます。この還付申告は2月〜3月にかけての確定申告の時期だけではなく、1年中いつでも受け付けてもらえます。
確定申告や還付申告は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」というサイトを使うと自動計算してくれて簡単にすることができます。
親が払った国民年金保険料は贈与税の対象にならない
一般の保険会社の保険商品は、親が契約者となり掛け金を払って、保険金を子供がもらうような場合、贈与税の対象となり税金を納めなくてはなりません。
国民年金の場合はどうでしょうか。親が国民年金保険料を子どもに代わって40年間払い続けたとします。子供は65歳になると毎年年金を受け取れるようになります。この場合贈与税はかかるのでしょうか?
贈与税はかかりません。
1年間の国民年金保険料は200,000円弱です。暦年課税の贈与税は年間1,100,000円を超えた場合に支払わなければなりませんが、国民年金保険料は生活していく上で必要な費用という位置づけで考えられているため、贈与ではなく生活費という扱いになっています。
法律(国民年金法代88条)で
「世帯主は、その世帯に属する被保険者の保険料を連帯して納付する義務を負う」
と定められているのですから、親が子どもの国民年金保険料を払うことは当然のことであり、子どもは65歳になった時、贈与税を払うことなく堂々と年金を受け取ることができます。
国民年金保険料は相続対策に利用できる
国民年金保険料を親が払い続けて、子どもが年金を受け取っても贈与税の対象にならないということは、
毎年20万円弱の資金を非課税で子どもに移すことができるということです。
子どもは贈与税を払うことなく親から毎年20万円弱の贈与を受けたことと同じになり、相続対策としても上手に利用できるのではないでしょうか。
まとめ
子どもが学生で国民年金保険料を払うことができない時、「学生納付特例」を利用して納付を延期(猶予)してもらわずに、親が代わりに国民年金保険料を払う方法があります。
生計を一にする親が子どもの国民年金保険料を支払うと、年末調整や確定申告で親の所得から社会保険料控除として100%差し引くことができ、節税になります。
国民年金保険料を親が払い続けて、子どもが年金を受け取っても贈与税の対象にはなりません。
「年金ってどうせもらえないから払わなくてもいい?払わないとどうなる?」はこちらをご覧ください。↓
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