年金はなくならないけれど、もらえる年金額は確実に減っていく

年金は確実に減っていく

少し前に「年金の2000万円問題」が世間を騒がせたことがありました。

老後暮らしていくためには公的年金だけでは足りなくて、他に2,000万円の老後資金が必要だという試算です。

 

貯金がなく、老後を公的年金だけに頼ろうと思っていた人にとっては、とてもショッキングな金額ですね。

 

でも、それどころか年金額はさらにどんどん減っていくとか、年金制度はすでに破綻していて、いずれなくなるなどと言われることもあります。

 

本当のところはどうなのでしょうか?

 

日本という国が存続する限り、公的年金はなくならないけれど、もらえる年金額は確実に減っていくというのが、今現在の見通しです。

 

年金制度ができた当時と現在を比較しながら見ていきましょう。

 
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高度経済成長期のベビーブームのまっただなかに作られた年金制度

現在の年金制度のもととなる国民皆年金制度ができあがったのは1961年(昭和36年)です。

海軍や陸軍の恩給(軍人や遺族に支払われた一時金や年金)から始まったものが時代とともに変化してできた制度でした。

今から60年前のことです。

意外と最近の話で驚きますね。

主婦や学生は加入の義務はありませんでした。

 

その5年後の1966年(昭和41年)に厚生年金基金制度が始まりました。取り入れたのは主に大企業です。

 

1960年(昭和35年)当時の平均寿命は男性65.32歳、女性70.19歳でした。

その当時のサラリーマンの定年は55歳だったので、定年後だいたい10年間ぐらい年金をもらうというのが標準的なパターンでした。

 

年金制度が始まった時代は高度成長期で、戦後1947年(昭和22年)から1949年(昭和24年)の第1次ベビーブームに生まれた、いわゆる団塊の世代がちょうど社会に出て働き始めた時期と重なります。

 

現役の働き手の人数が多く、年金をもらう高齢者は少なかったので、年金制度はとてもうまくいく夢のような制度に思えました。年金の財源はどんどん増えていき、足りなくなる心配はなかったのです。

 

急速に進む少子高齢化で年金財政は厳しくなった

ところが、医療や住環境の発達によって寿命が延び、高齢化が進みました。

平均寿命は2004年(平成16年)には男性78.64歳、女性85.59歳になり、2019年(令和元年)には男性81.41歳、女性87.45歳になりました。

最近では100歳まで生きることもめずらしくなくなり、20年、30年、40年と年金をもらい続ける人が増えてきました。

 

反対に、ひとりの人が産む子どもの人数は減っていき、年金の財源を支えるはずの働く現役の人数はどんどん減り続けています。

少子高齢化で保険料を払う現役世代が減って、年金をもらう高齢者が増え続ければ年金財政は厳しくなるのはあたりまえです。

 

年金制度を破綻させることなく続けていくためには収入と支出のバランスを取らなければなりません。

景気が良い、悪い

インフレ、デフレ

出生率が下がる、平均寿命が延びる

物価が上がる、下がる

など、様々な状況に対応させていくために、数回の大幅な年金の法改正が行われました。

 

「賦課方式」で現役世代が高齢者を支えるデメリット

公的年金は、一般の生命保険会社の年金保険のように自分が払った年金保険料を積み立てて自分がもらうものではありません。

現役世代が支払った保険料をその時の高齢世代が年金としてもらいます。これを「賦課方式」といいます。

 

自分で積み立てたものを自分がもらう「積み立て方式」だと、物価が上がっても積み立てた年金は増えないので、老後に年金を受け取る時にはお金の価値が下がってしまい、少ない金額しか受け取れなくなります。

 

その点、「賦課方式」だと、現役世代の支払った保険料と同じ時代の同じお金の価値で高齢者が年金を受け取ることができるので、物価の影響を受けることがありません。

 

当初は「賦課方式」をとりいれていましたが、「賦課方式」には、働く現役世代が少ないと、年金の財源が足りなくなってしまうというデメリットがありました。

 

積み立て方式を取り入れ、年金の財源を増やしている

そこで2001年(平成13年)以降、この「賦課方式」に加えて「積み立て方式」も取り入れることになりました。

基本的には賦課方式ですが、公的年金の財源のうち、すぐに使わないものについてはそのまま保有し、国内外の投資信託などへ投資をして増やしていくことが積極的に行われています。

 

株価が暴落した時に年金の投資額が18兆円近く減ったなどと、ニュースで大きく報道されることがあり、「私たちの大事な年金を、また減らしたのか?!」と、あきれている人は多いと思います。

 

でも実際は、暴落した時にどんどん買い増しをして、安く買い付けては上手に増やしているので、一時的に損失を出しても、運用を始めた2001年からの累計では74.9兆円の利益を出しています。

年金積立金の運用実績は累積+74.9兆円

出典:年金積立金管理運用独立行政法人ホームページ

 

また、国が年金の財源を負担する割合も引き上げられて、財源が足りなくならないように調整しています。

 

「物価スライド」から「マクロ経済スライド」へ

年金制度ができた当時の日本は高度経済成長期のまっただなかだったので、お給料はどんどん上がるけれど、物価もどんどん上昇していて、生活費も上がっていきました。

当然、納める年金保険料も上がるし、もらえる年金額も上がっていきました。

これを年金の「物価スライド」と言い、平成16年に改正する前までこの方法で年金保険料と年金受給額が決められていました。

 

けれども、少子高齢化が予想以上に早く進んだので、このままでは多くの高齢者の年金を支払うための財源を確保するために、現役世代が払う保険料がどんどん上がってしまい、負担が大きくなりすぎるという問題が出てきました。

2004年(平成16年)の改正以降は「物価スライド」ではなく「マクロ経済スライド」という方法がとられ、将来の現役世代の負担を減らすようになっています。

「マクロ経済スライド」とはどんなものなのでしょうか?

 

「マクロ経済スライド」とは?

マクロ経済スライドとは、現役の人口の減少や平均寿命の延びに合わせて、公的年金の支給額を自動的に調整する仕組みのことです。

足りない財源をなんとか足りるようにしていこうと考えられた制度です。

 

賃金や物価が上昇する割合ほどは、もらえる年金額を増やさないようにすることで、長い時間をかけて若い現役世代の負担を増やさないようにしていきます。

 

マクロ経済スライドの自動調整を行うと、もらえる年金額はだいたい下記のように変化します。

物価や賃金が大きく上昇した場合 → 年金額は据え置きか、ほんの少しだけ上昇

賃金や物価が少し上昇した場合 → 年金額は据え置き

賃金や物価が下落した場合 → 賃金や物価の下落分、年金額を下げる

ようするに、物価や賃金が上がっても、年金額はほとんど上がらず、物価や賃金が下がると、年金額は下がります。

その結果、実質の年金額は何十年もかけて値下がりしていくことになります。物価や賃金が上がっても、年金だけが増えないということです。

支給額を自動的に調整する仕組みなどと、はっきりしない表現で説明されることが多いのですが、実は「マクロ経済スライド」はもらえる年金の実質の金額を、何年もかけて減らしていく仕組みなのです。

厚生労働省は、およそ25年後には実質の年金受給額を約2割減らす見通しを発表しています。

 

「財政検証」と「オプション試算」

「マクロ経済スライド」という年金の自動調整の仕組みを取り入れたものの、世の中の状況が目まぐるしく変わっていく中では、やはり公的年金の制度は常に細かい調整が必要になってきます。

そこで2002年(平成16年)以降は今後の公的年金の収支のバランスの見通しなどを検証するための「財政検証」が5年ごとに行なわれています。

また「オプション試算」といって、色々な場合を想定して、その時に年金がどうなるかを試算してみています。

たとえば次のような試算です。

アルバイトなどの短期労働者が厚生年金の対象になった場合

年金保険料の納付期間を65歳まで延長した場合

年金をもらい始める年齢を70歳に遅らせた場合

 

このオプション試算を行なった上で、良いと思われる点については法改正を行なっていこうというものです。

 

結論・・・年金はなくならないけれど、もらえる年金額は確実に減っていく

「オプション試算」でどのような試算が行われているかを見れば、国が進んで行こうとしている道が見えてきます。

年金制度は、なるべく多くの現役世代から長い期間たくさんの保険料を納めてもらい、もらい始める時期はできるだけ遅くして、短い期間少ない年金を支給するようにしていけば、破綻せずに続けていけるのですから、その方向を国が模索しているのは当然のことでしょう。

少子高齢化が進めば進むほど、そういう方向に進んでいくのだと覚悟していなければなりません。

実際、2020年5月に年金改正法が成立し、短時間労働者の厚生年金加入対象者の拡大や、受給開始年齢を75歳まで遅らせることを可能にすることなどが、2022年から適用されることになっています。

 

年金制度には、これが正解というものはありません。その時々の様々な要因によって変化していくものです。

今回の新型コロナなどのように思いもよらないことが起こり、世の中の状況が一変してしまうこともあります。

 

今後、年金制度がどのように変わっていくかは、誰にもわかりませんが、とりあえず今現在は「公的年金はなくならないけれど、もらえる年金額は確実に減っていく」という見通しです。

 

そうであるならば、足りない部分をどうやって補っていくかを、若いうちから真剣に考えて対策していかなければなりません。

 

まとめ

公的年金制度ができた後、少子高齢化が予想以上に早く進んだので、年金の財政が破綻しないようにするために、様々な法改正が行われてきました。

公的年金の財源を投資して増やしたり、国が年金の財源を負担する割合を引き上げたりして、財源が足りなくならないように調整しています。

また、もらえる年金の実質の金額を、何年もかけて減らしていく「マクロ経済スライド」を取り入れ、「財政検証」や「オプション試算」などで長期的な収支のバランスを検証しています。

 

年金制度はその時々の様々な要因によって変化していくものなので、今後どのように変わっていくかは誰にもわかりませんが、とりあえず「公的年金はなくならないけれど、もらえる年金額は確実に減っていく」というのが今現在の見通しです。

 

 

「年金ってどうせもらえないから払わなくてもいい?払わないとどうなる?」はこちらをご覧ください。↓

 

 

「子どもが払えない国民年金保険料を親は払い続けるべきか」はこちらをご覧ください。↓

 

 

「学生が国民年金保険料を払えない時どうしたらいい?免除してもらえる?」はこちらをご覧ください。↓

 

 

厚生労働省「いっしょに検証!公的年金」

 

厚生労働省:マクロ経済スライドってなに?

 

年金積立金管理運用独立行政法人

 

 
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この記事を書いた人

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杉本ゆめ Yume Sugimoto

合同会社プレシャスワン代表、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。他に野菜ソムリエ、雑貨カフェクリエイターの資格も持つ。今までの経験と知識を生かし、一人でも多くの方に幸せになっていただくお手伝いをするために活動中。夢は国内、海外を問わず色々なところを旅して様々な文化に触れながら暮らすこと。