年末調整で税金を取り戻せることがよくわかるようになるお話
年末調整って何のためにやるのでしょうか?
年末になると会社で毎年ワケのわからない書類を渡されて、記入して提出するように言われるけれど、何をどう書いていいのやらチンプンカンプン。
よくわからないから名前だけ書いてハンコを押して出しておけばいいか。
というあなた、もったいないですよ。
きちんと記入すれば、納めすぎた税金が戻ってくる可能性が大きいのですから。
今回はわかりやすく年末調整で何をするのか、というお話をしてみましょう。
目次
年末調整とは何か
年末調整というのは、あなたが払うべき正しい税額を再計算するためのものです。
年末調整は11月から翌年1月にかけてあなたが働いている企業で行われます。
あなたに給与を支払っている企業は、あなたの給与から預かった税金を、あなたの代わりに税務署に毎月納めています。
あなたは納めたつもりはないでしょうが、ちゃんと払ったという証拠があります。
毎月もらう給与明細書の「源泉徴収税額」という欄に書かれた金額はあなたがすでに払った税金です。(アルバイトやパートの場合は税金が支払われていないこともあります。)
ただし、この税金の額は「とりあえず」の金額です。
夏は残業が多くてたくさんお給料をもらったけれど、冬はヒマだからお給料が少なかった、というようにお給料は毎月ばらつきがあるので、1年間にいくらの収入があるかが予測できず、正確に1年間の税金がいくらになるのかがわかりません。
12月になって1年分の給与を合計して、そのトータルの金額をもとに正しい税率をかけて計算し直してみて、初めて正しい税額がわかります。
税金を納めすぎていた場合には税金を返してくれます。
「12月のお給料って、毎年少し多いからうれしい!」と思っていませんか?
(別にたくさんもらったわけではなくて、あなたのお金が戻ってきただけなんですけどね)
反対に年の途中から収入が増えた場合などは、納めた税金が少なすぎるため、12月の給与から足りない税金分が差し引かれることもあります。
このように税金の正しい金額を再計算するのが「年末調整」です。
年末調整の控除とは?
もう一つ年末調整でする大事なことがあります。
税金の額を再計算する時に必要になる、正確な「控除額」を出すことです。
「控除」っていう言葉、とっつきにくいですよね。
取られているのか、もらえるものなのか、いいヤツなのか悪いヤツなのか…。
年末調整で「控除」というのは、税金の計算をする元となる収入から差し引くものをさします。
つまり、コレがあるおかげで税金が安くなるっていう、いいヤツなんです。
覚えてあげてください。いいヤツですから。
税金というのは、単純に1年間の収入に対してかけられるものではありません。
その仕事をするためにかかった必要経費や、家族を養うことに対する費用などを収入から引いた金額(所得)に、収入額に応じた税率をかけて求めることになっています。
こどもが1人もいない人と10人いる人とでは生活の大変さが違いますよね?
親の家に同居している人と、自分で家を建ててローンの返済をしている人も生活の大変さが違いますよね?
「大変な人の税金は返してあげるから、どのくらい大変か、差し引きできる金額(控除額)をちゃんと教えてね」というのがもう一つの年末調整の大事な目的です。
控除額が大きければ大きいほど所得が少なかったとみなされて、税金は安くなるのです。
いったいどのくらい税金が戻ってくるのか?
では、控除があると、いくら税金が戻ってくるのでしょうか?
よく間違えるのは、控除額が戻ってくると思ってしまうことです。
控除額というのは税金の金額を計算する元となる収入から引く金額なので、それがそのまま戻ってくるのではなく
「控除額に税率をかけた金額が戻ってくる」と考えるのが正解です。
たとえば400万円の所得があって控除額が50万円だった場合を見てみましょう。
400万円の所得の場合、税率は20%ですから
50万円×20%=10万円となり、
税金が10万円戻ってくることになります。
※ただし住宅借入金等特別控除の場合は、控除額そのものが戻ってきます。
年末調整で提出する申告書は3種類
年末調整の時に提出する申告者は3種類あります。
1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
各種扶養控除や障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除などを受けるために提出するもの。
対象者がいない場合でも提出しなければなりません。
2カ所以上から給与の支払いを受けている場合には、主となる1ヶ所にのみ提出します。
1年の最初に給与をもらう前に提出することになっていますが、その後に子どもが生まれたなど、扶養親族の変更があるたびに提出します。提出を忘れている場合は年末調整で提出します。
年末調整の時に翌年の分を提出させる企業もあります。
2. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
令和元年までは給与所得者の基礎控除は、申告書を提出しなくても全員が受けられましたが、令和2年分からはこの申告書を提出しないと基礎控除が受けられないことになりました。
配偶者控除については、本人の所得と配偶者の所得によって控除される金額が変わってきます。表に書かれた金額から選んでいくと自動的に控除額が出るように工夫されています。
ただし、選ぶ金額を間違えてしまうと控除額も間違ってしまいますから、気をつけてください。
本人の所得額と配偶者の所得額は収入のことを言っているのではありません。裏面の「給与所得の金額の計算方法」という表から所得額を計算して記入します。
所得金額調整控除は令和2年分から新しくできた制度です。必要な項目だけ記入すれば、金額は給与支払い者が計算してくれます。収入が850万円以下の方は対象外ですので記入の必要はありません。
3. 給与所得者の保険料控除申告書
生命保険料、地震保険料、社会保険料(家族の国民年金や国民健康保険など)、iDeCoの支出などがあった場合に記載します。
給与から自動的に差し引かれるようになっている生命保険料、厚生年金保険料、健康保険料、確定拠出年金等の掛金などは記入する必要はありません。
※国税庁のホームページに、申告書の細かい説明付きの記入の仕方の例がありますので、ここを見ながら記入するとわかりやすいです。
《記載例》令和2年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
「年末調整の申告書の難しい言葉をわかるようにする」はこちらをご覧ください。↓
年末調整でできる控除の種類
年末調整でできる控除には何があるか見てみましょう。
給与所得者が全員受けられる控除
- 給与所得控除・・・55万円〜195万円。収入が増えると多くなります。スーツ代などがかかって大変だったでしょうからと引いてくれる金額。いわゆるサラリーマンの必要経費。令和2年分から金額が変わりました。(国税庁:給与所得控除)
対象者が受けられる控除
- 基礎控除・・・令和元年までは誰もが一律に38万円引いてもらえましたが、改正後は所得金額によって48万円〜0円になりました。また、令和2年分から「給与所得者の基礎控除申告書」を提出しなければいけないことになりました。(国税庁:基礎控除)
- 配偶者控除・・・本人の所得、配偶者の年齢などによって、控除額は48万円〜13万円。(国税庁:配偶者控除)
- 配偶者特別控除・・・本人と配偶者の所得によって、控除額は38万円〜1万円。配偶者がパートなどで働いていて、所得が48万円(給与所得だけの場合は給与収入103万円)を超える場合、配偶者控除ではなく、こちらの配偶者特別控除の対象になります。(国税庁:配偶者特別控除)
- 所得金額調整控除・・・給与の収入金額が850万円を超える人で、本人が特別障害者に該当する場合、または23歳未満の扶養親族や、特別障害者の配偶者や特別障害者の扶養親族がいる場合に受けられる控除。15万円まで。(国税庁:所得金額調整控除)
- 扶養控除・・・配偶者以外の16歳以上の親族で、所得が48万円以下(給与所得だけの場合は給与収入103万円以下)の人。控除額は38万円。扶養親族のうち19歳以上23歳未満の人は特定扶養親族で控除額は63万円。70歳以上の人は老人扶養親族で控除額は48万円。同居している70歳以上の父母や祖父母は同居老親で控除額は58万円。(国税庁:扶養控除)
- 障害者控除・・・本人や同一生計配偶者(所得が48万円以下)、扶養親族が障害者に当てはまる場合。27万円〜75万円。(国税庁:障害者控除)
- 未婚のひとり親控除・・・ひとり親の条件に当てはまれば35万円。(国税庁:ひとり親控除)
- 寡婦控除・・・死別、離婚などをした女性のうち、ひとり親に当てはまらない人。条件によって35万円〜0円。男性の寡夫控除は令和2年からなくなり、ひとり親控除の対象になりました。(国税庁:寡婦控除)
- 勤労学生控除・・・本人が勤労学生である時。条件に当てはまれば27万円。(国税庁:勤労学生控除)
- 生命保険料控除・・・生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を払っている人。最大12万円。(国税庁:生命保険料控除)
- 地震保険料控除・・・地震保険料を払っている人。最大5万円。(国税庁:地震保険料控除)
- 社会保険料控除・・・家族の年金や健康保険料を払った場合。支払った金額の全額が控除されます。(国税庁:社会保険料控除)
- 小規模企業共済等掛金控除・・・小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合、iDeCoをしている場合など。全額が控除されます。(国税庁:小規模企業共済等掛金控除)
- 住宅借入金等特別控除・・・住宅ローンの支払いがある人。最大40万円。(国税庁:住宅借入金等特別控除)
※税制改正があったので、令和2年分からの年末調整は今までと変わった点がたくさんありますので注意してください。
年末調整でできない控除(確定申告しなければいけないもの)
- 医療費控除・・・病院に通ったり、入院したり、薬を買ったりした金額が一定額を超える人(国税庁:医療費控除)
- 初めての住宅借入金等特別控除・・・家を買ったり、増築などをしたりするために住宅ローンを組んだ人。2回目からは年末調整でできます。(国税庁:住宅借入金等特別控除)
- 寄附金控除・・・寄付をした人、ふるさと納税をした人。(国税庁:寄附金控除)(国税庁:ふるさと納税)
- 配当控除・・・配当金を受け取った人(国税庁:配当控除)
- 雑損控除・・・災害又は盗難もしくは横領によって、資産について損害を受けた場合(国税庁:雑損控除)
給与所得者で確定申告しなければいけない人
次の方は自分で確定申告をする必要があります。
- 給与収入が2,000万円を超える人。
- 1カ所から給与の支払いを受けている人で、主な給与や退職所得以外に20万円を超える所得がある人。
- 2カ所以上から給与の支払いを受けている人で、主な給与や退職所得以外に20万円を超える所得がある人。
また、すでに年末調整をした方で、きちんと申告したつもりだったのに、家族の国民年金を払ったのを申告し忘れたとか、後になって生命保険会社から送られてきた保険料控除証明書が出てきた、なんていう場合も、年明けの2月15日から3月16日までの間に自分で確定申告をすれば間に合います。
まとめ
年末調整というのは、あなたが払うべき正しい税額を再計算するためのものです。
12月になって1年分の給与を合計して、そのトータルの金額をもとに正しい税率をかけて計算し直してみて、初めて正しい税額がわかります。
税金を納めすぎていた場合には税金を返してくれます。
もう一つ年末調整でする大事なことがあります。
税金の額を再計算する時に必要になる、正確な「控除額」を出すことです。
控除額が大きければ大きいほど所得が少なかったとみなされて、税金は安くなるのです。
年末調整でできない控除もありますので、その場合は確定申告をしましょう。
また、給与収入が2,000万円を超える人や2カ所以上から給与の支払いを受けている人などは、自分で確定申告をしなければなりません。